『カスタマイズ』―”特注”こそ21世紀のビジネスモデル

カスタマイズ
この記事は約7分で読めます。

カスタマイズ

カスタマイズ 【特注】をビジネスにする戦略』(アンソニー・フリン、エミリー・フリン・ヴェンキャット著、和田美樹訳)の書評記事です。

著者のアンソニー・フリンは、消費者が自分好みにカスタマイズされたシリアルバーを作ることができる「ユーバー(YouBar)」の設立者。
「一人ひとりが求めるものは異なる」という理念のもと、1日1万本以上のカスタムシリアルバーを製造しています。

これまでの「大量生産・大量消費・大量廃棄」の時代は終わりを告げ、消費者が自分好みに製品を”カスタマイズ(特注)”して使うのが当たり前となる時代が到来しようとしています。
一体”カスタマイズ”とはどのようなビジネスなのでしょうか?

カスタマイズは特別なモノではない

スタバ、ユニクロ、ナイキ…企業はすでにカスタマイズを商品にしている

カスタマイゼーションは単なるトレンドじゃない。二〇四〇年までには、食べるもの、着るもの、車、広告、海外旅行と消費者の買うものすべてが、個人の好きなようにカスタマイズされるようになる。ありとあらゆるものが。(P.24)

“カスタマイズ(特注)”というと、何だか特別なモノな気がしますよね。
でも”カスタマイズ”はすでに私たちの身近なモノになっているのをご存知でしょうか?

ちょっと普段の生活を思い浮かべてみてください。

スタバで自分好みのドリンクをオーダーし、ユニクロのサイトでデザインしたTシャツを着て、Amazonのサイトでは「この商品を買った人はこんな商品も買っています」に表示された商品をクリックしていますよね。

これらはすべて”カスタマイズ”された商品・サービスになります。

さらにGoogleで「カスタマイズ」と検索してみると、トヨタ・リーボック・ナイキ・パナソニック・DELLなど、名だたる企業がカスタマイズ製品のサイトを用意しています。

私たちはすでに自分好みに”カスタマイズ”された製品を買っていて、それが当たり前になっているんですね。

“DIY”から”CIY”へ

人と同じものは使いたくない

1970年頃から始まった工場による大量生産はそれまでの生活を大きく変えました。
これまで家庭で作られていた料理はファストフードや冷凍食品に、ミシンで作られていた衣服は工場で作られた既製服に、親が子どもに聞かせていた物語はテレビの娯楽番組に取って代わったのです。

みんなが同じものを食べ、同じ服を着ている、ある意味個性のない時代。
そんな状況におかれた消費者が「もっと自分らしいモノ」を求めるのは当然の流れです。
そこで企業は同じ商品の「バリエーションを大量に増やす」という方法で対応しました。

結果、スーパーで取り扱われる商品の数は1920年代の700品目が1980年代には14,000品目に、その後さらに増え48,000品目に増えたそうです。

大量生産・大量消費・大量廃棄時代の到来です。

DIYとCIYの違い

ところで自分好みのモノというと真っ先に思いつくのが”DIY(Do It Yourself)”ではないでしょうか?

自分が欲しいモノを設計し、材料を揃え、実際に形にしていく。
モノづくりが得意な人であれば”DIY”は楽しい作業ですが、そうでない人にはちょっとハードルが高いのも事実ですよね。

そこで出てくるのが”CIY(Create It Yourself)”。
“CIY”は、”DIY”のようにすべての作業を自分でやる必要がありません
自分でやるのは「人とは違うオリジナルのモノをクリエイトする部分」だけ。

例えばサイト上でTシャツや車のデザインをしたり、グルテンフリーのシリアルバーの材料を好きなように選ぶといった”楽しい工程”だけを自分でやります。
実際に車に塗装をしたり、小麦抜きの料理をする”面倒な作業”は人(企業)にお任せするということです。
これなら誰でも自由に自分好みのモノを作ることができますよね。

カスタマイズはまさにこの”CIY”の精神に基づいています。

ネット技術の向上と3Dプリンタの登場でCIYが加速

3Dプリンターの最大の利点は、問題解決に役立つものを、いつ誰が発明しても、それを信じられないスピードで広めることができる点だ。もしタイでデザインを学ぶ学生が、服が滑り落ちないハンガーを発明したとしても、その人は発明の設計図をiPhoneアプリのような形で世界中に流通させ、その日のうちに3Dプリンターを持つ小さな会社が消費者のために製作することができる。(P.110)

“CIY”によって、これまでの大量生産・大量消費・大量廃棄時代に変化が生じます。

まずはネット技術の向上。
どこにいても接続できる高速なネット回線、信頼性の高いオンライン決済、効率的な発送システムなどインターネットを取り巻く技術はここ数年で大きく向上しました。

そしてデジタルデータから簡単に製品を作りだすことができる”3Dプリンタ”の登場によって、CIYは一気に加速します。

顧客がPC上でデザインしたモノが、ネットを通じて企業に送られ、3Dプリンタなどの技術によって自由に製品が作られるようになったんですね。

大量生産された既製品と自分好みにカスタマイズされた特注品。
あなたならどちらを選びますか?

大量生産・大量消費・大量廃棄社会からの脱却

過剰なモノはストレスを生むだけ

毎日視界に入ってくる大量の広告は「もっと! もっと!」と消費を促し、広告につられて買った大量モノが自宅のスペースを圧迫しています。

また大量生産によって作られたものの、売れずに残ったモノが大量に廃棄される(そして良心が痛む)。
情報過多・物質過多は私たちにも地球にも大きなストレスになってるといえます。

断捨離やミニマリズム、デジタルデトックスが流行るのも納得できますね。

しかし、カスタマイズビジネスならその心配はありません。
基本的に発注がなければ製品は作られないので、過剰に生産して余計な在庫を抱える必要がないんですね。

そして自分がカスタマイズに関わっている商品は、通常の商品よりも愛着が湧きやすいということが行動経済学でも明らかになっています。

身の回りのものが愛着のある商品ばかりになれば、わざわざ大量生産された既成品を買い続ける必要がなくなりますよね。

カスタマイズビジネスは心にもお財布にも地球にも優しいビジネスであると言えそうです。

ライフスタイルのカスタマイズ

さらにカスタマイズビジネスは製品だけにとどまりません。

現在の社会の中核といえる”ミレニアル世代”(1980〜2000年頃生まれた世代)は、成功して大金を稼ぐことよりもワークライフバランスを重視する傾向にあるそうです。

そんな彼らは自分の好きなように勤務体系を組み立てることができる企業で働くことを希望する人が多いのだとか。

また教育の現場にも変化が見られています。
従来の横一列教育ではなく、一人ひとりの習熟度に合わせたカリキュラムを組んでくれる塾が選ばれるようになっています。

ライフスタイルがカスタマイズできるようになれば、誰かに押し付けられた仕組みではなく自分で作った仕組みの中で動けるようになります。
そうなれば受けるストレスは大幅に少なくなりますよね。

これは今後のビジネスの形に大きな変化を与えるのではないでしょうか?

まとめ

本書では実際にアメリカで展開されているカスタマイズビジネスの実情から、カスタマイズビジネスを成功させる手法までを詳しく解説しています。

もはやカスタマイズできることが当たり前となっている世の中。
カスタマイズは21世紀のビジネスモデルとして大きな可能性を秘めていると言えそうです。

カスタマイズビジネスに興味があればどうぞ。

コチラの記事もどうぞ




コメント

タイトルとURLをコピーしました