『魔法をかける編集』(藤本智士/著)という本が面白かったのでご紹介。
著者の藤本智士氏は秋田県発行のフリーマガジン「のんびり」やWebマガジン「なんも大学」の編集長。
編集という視点を通して、どのようにメディアや世の中と向かい合うか。
そんなことが分かる本でしたよ。
編集ってなんだ?
編集というと雑誌やWebの“編集者”のイメージが強いですが、そもそも編集って何なんでしょう?
本書では編集を以下のように定義しています。
僕が思う編集力とはズバリ、「メディアを活用して状況を変化させるチカラ」です。
(P.3)
「編集」とは、理想とする「ビジョン」を、多様な「メディア」を活用して実現させようとするための手段であり、「編集者」とは、その使い手であるというこのシンプルな図式を理解してもらえるだけで、世界は大きく変化します。
(p.47)
一見すると難しいことを言っているようですが、要するに自分のやりたいことを実現するための手段として、ブログや動画やリトルプレスなどのメディアを使って表現するということですな。
ここで大事なのが目的と手段を履き違えてはいけないこと。
なんとなく流行ってるみたいだからブログを始めてみる、勢いだけでWebメディアを作ってみる……では途中で頓挫する可能性大です。
編集の先にあるものをきちんと見据えることが必要なんですな。
自分自身もメディアのひとつ
さてさて前述の「メディア」ですが、これは何もブログや動画やリトルプレスに限ったことではないんですね。
実は自分自身もメディアである、ということを本書では言っています。
あなた自身がどんな服を着て、何を身に着け、どんなものを食べ、誰と付き合い、何を話し、どんな行動をとるか。その一挙手一投足が、あなた自身からの発信であり、それはもはやあなた自身がメディアなんだということです。
(p.20)
例えば自分のサイトで集客をしたいと考えている人が、ブログを全く更新せず、インスタグラムにラーメンの写真ばかりアップしていたら、「この人はただのラーメン好きなんだな」とか「ラーメンばかり食べているけど自己管理できているのかな」と思われてしまいますよね。
あるいはフリーランスで仕事をしている人が、初対面のクライアントとの打ち合わせにTシャツとジーンズで出かけたらどんな印象を持たれるでしょうか?「カジュアルで気さくな人なんだな」と思ってくれるでしょうか?
世の中に自分をどう見てもらいたいか、そのためには何をすれば良いのか。
自分の行動すべてが自分というメディアに跳ね返ってくるわけです。
これを考えて実行することも編集のひとつと言えそうですよ。
新しい当たり前を作りだす
自分が信じるさまざまな物事を、あたらしい“ふつう”=「当たり前」にしたいというのが僕の衝動の原点です。この、当たり前な状況を作るということに対して、編集の魔法はとても有効なのです。
(p.61)
本書では2004年頃、ペットボトルの普及による使い捨て文化を見て「みんなが水筒を持ち歩けばいいのに」と考えた筆者が、当時衰退していた水筒業界に働きかけ、今では普通に見かけるようになったマイボトルを世の中のスタンダードにするまでのエピソードが紹介されています。
この話を読んで何か既視感を感じるなーと思ったら、みうらじゅん氏の『「ない仕事」の作り方』でも同じようなことを言っていたんですね。
仏像やゆるキャラが好きだったみうらじゅん氏が、流行する前からコツコツと調べ、情報を発信し続けた結果「仏像ブーム」「ゆるキャラブーム」が訪れ、これらは“あたらしいふつう”になりました。
自分の欲しい未来は自分で作ることができる。
その道のりは決してラクなものではないかもしれませんが、自分なりに情報を集め、編集して、発信し続けることで世の中に広めることができる、というわけですな。
まとめ
世の中に埋もれている良いものを、編集の力を使い“あたらしいふつう”として紹介する。
これはある意味「魔法」のようなものかもしれません。
いろいろとやってるんだけど、何かうまくいかないなーという人は「編集」の力が足りてないのかも。
自分や自分の運営するメディア(ブログやSNSなど)に対する考え方がちょっと変わる本でした。
ご興味あればどうぞ。
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